大判例

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名古屋高等裁判所 昭和29年(う)381号・昭29年(う)380号・昭29年(う)379号 判決

次に原判示第一の(二)の事実につき検討するに原判決は「被告人川上はその自宅において何れも同候補者に当選を得しめる目的を以て他の選挙運動者又は選挙人に対し選挙運動費用及び報酬又は投票報酬等の趣旨で供与させる資金として被告人中場卓也に対し(1)同月十六日頃現金二万円、(2)同月二十四日頃現金一万円を各交付しと認定しこの訴因の要旨はまず被告人川上義輔は中場卓也に対し何れも同候補者に当選を得しめる目的を以て他の選挙運動者又は選挙人に供与すべき運動報酬又は投票報酬資金として、(一)同月十日頃現金十五万円、(二)同月十六日頃現金十五万円、(三)同月二十四日頃現金三十万円を交付しといい、次に被告人中場卓也は単独で判示趣旨の下に判示第二の金員供与の所為に及んだというのであるところ、本件証拠調の結果によれば中場卓也は川上から交付を受けた前記(一)の十五万円は全部、前記(二)の十五万円は十三万円を、前記(三)の三十万円は二十九万円を何れも川上の指示又は謀議に基いて判示第二認定通り上野吉太郎以下の各選挙運動者に供与したことが明らかである。凡そ公職選挙法第二百二十一条第一項第五号(所謂交付罪)は同条同項第一号乃至第三号の行為を為さしむる目的を以て選挙運動者に対し金銭若しくは物品を交付することによつて成立し、右受交付者が未だ第一号乃至第三号の所為に出なくとも交付罪として独立して犯罪を構成するが、右受交付者において交付者の意を体して他の選挙運動者或は選挙人等に対し供与又は饗応接待等をすれば、交付者はその共同正犯となり交付罪はこれに吸収せられ別罪を構成しないものと解すべきであるから、本件においても交付者たる川上は受交付者たる中場の金員未供与の範囲内即ち前記(二)の二万円、(三)の一万円については何れも交付罪として処断すべきであるが、その余の点については判示第二認定の如く中場の各供与の所為につきその共同正犯として交付罪はこれに吸収せられるものと解する」と説示している。然れども受交付者が交付者の意を体して交付の金品を以て供与又は饗応接待すれば交付者はその共犯となり交付は之に吸収せられ別罪を構成しないことは右判示の通りであるが、選挙運動の報酬供与を共謀した者の間に供与資金を授受する行為は之を受領した者がその一部を自己の手許に保留した場合においても同様独立の交付罪を構成しないものと解すべきであるから、原判決が川上被告を右供与罪の共同正犯と認めた以上中場が川上から交付を受けた前示金員中未だ供与しなかつた前記(二)の二万円、(三)の一万円についても交付罪を構成せず無罪であるのに拘らず、原判決が之を有罪としたのは違法であり、この点において原判決は破棄すべきである。

(裁判長判事 高城運七 判事 柳沢節夫 判事 赤間鎮雄)

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